マムルーク朝と十字軍|聖地防衛の最終局面を背負う

十字軍時代の王朝解説「マムルーク朝」編

この記事ではマムルーク朝と十字軍の関係を解説しています。聖地防衛の最終局面を担ったマムルーク朝の戦略とその成果に注目し、最後のイスラム防衛線に迫っていきましょう。

マムルーク朝と十字軍|聖地防衛の最終局面を背負う

マムルーク朝は、十字軍と激しく対立したイスラム王朝の一つであり、イスラム勢力として聖地防衛の最終局面を担った存在です。特にバイバルス(1223年 - 1277年)やカラウーンといった歴代のマムルーク朝スルタンは、強力な軍事力と巧みな外交で十字軍を押し返し、その支配力をエジプトからシリアにまで拡大しました。この記事では、マムルーク朝の成立や統治体制、さらに十字軍との激しい戦いについて詳しく解説します。

 

 

マムルーク朝とは

マムルーク朝は、1250年にエジプトで成立し、13世紀から16世紀初頭にかけて西アジア一帯を支配したイスラム王朝です。その力の源泉は、かつて奴隷であった戦士たちが担う強力な軍事力にありました。特に十字軍とモンゴルの脅威が増す中で、イスラム世界の守護者としての役割を果たしたのがマムルーク朝なのです。

 

成立背景

マムルーク朝は、アイユーブ朝のエジプト支配が衰退したのを機に成立しました。当時、エジプトではマムルークと呼ばれる軍事奴隷が組織されており、これらの奴隷兵士たちはスルタンの親衛隊として力を蓄えていきました。そしてアイユーブ朝の混乱期に、これらのマムルーク戦士が主導権を握り、エジプトで独自の王朝を打ち立てたのです。

 

マムルーク朝の建国は、イスラム世界における軍事奴隷層の役割の変化を象徴するものでした。

 

支配地域

マムルーク朝の支配地域は、エジプトを中心にシリア、メッカ、メディナなどのアラビア半島の重要な聖地まで広がりました。この広大な領域は、スンニ派イスラムの重要拠点として位置付けられ、十字軍との戦いに備える軍事拠点ともなっていました。さらに、マムルーク朝は交通の要所にあたるシリアを抑えることで、東西の交易ルートを支配し、強大な経済力も手に入れたのです。

 

統治体制

マムルーク朝の統治体制は、軍事階層制が基盤にありました。スルタンを頂点とし、その下には各地を治める有力なマムルーク将軍が配属されました。軍事と政治が一体化したこの体制は、戦士集団によって国を守る構造として機能し、十字軍やモンゴルに対抗するための強力な軍事力を備えたものだったわけです。また、厳格なスンニ派イスラム教の遵守を求め、宗教的な結束も保たれていました。

 

マムルーク朝の十字軍運動への関与

マムルーク朝は、十字軍との対立を通じてイスラム世界の守護者としての地位を確立しました。歴代のスルタンたちは十字軍との戦いに勝利し、最終的には中東からキリスト教勢力を排除することに成功したのです

 

第七回十字軍との戦い

マムルーク朝が台頭する時期、ヨーロッパでは十字軍遠征が熾烈化していました。フランス王ルイ9世が率いる第七回十字軍はエジプトを侵略しましたが、マムルーク朝のスルタン、クトゥズとその将軍バイバルスの活躍により、十字軍は撃退されました。特に、バイバルスは巧妙な戦術を駆使し、ルイ9世を捕虜とするという劇的な勝利を収めました。この戦いは、マムルーク朝がイスラム世界の防衛を担う一大勢力としての地位を確立する契機となったのです。

 

十字軍拠点の攻略

その後、スルタンとなったバイバルスは十字軍の拠点都市攻略に取り組み、パレスチナやシリアの沿岸地域の要塞都市を一つずつ奪還しました。アンティオキア、アスカロン、ヤッファなどの要塞都市が次々と陥落し、十字軍の拠点が消滅していきました。こうしてマムルーク朝は、十字軍勢力を中東から追い出し、聖地防衛の役割を担ったのです。

 

アッコンの陥落と十字軍運動の終焉

1291年、スルタン・カラウーンの後を継いだ息子アシュラフ・ハリールによって、最後の十字軍拠点アッコンが陥落しました。アッコンの陥落は、十字軍時代の終焉を象徴する出来事であり、マムルーク朝がキリスト教勢力を完全に排除した象徴的な勝利とされます。これにより、マムルーク朝は中東地域の安全とイスラム教の聖地の防衛に名実ともに成功したと言えるでしょう。

 

以上、マムルーク朝と十字軍の関係についての解説でした!

 

ざっくりと振り返れば

 

  • マムルーク朝はエジプトで成立し、軍事力を背景に支配を広げた
  • 第七回十字軍との戦いで勝利し、エジプトの防衛者としての地位を確立
  • 最終的に十字軍の拠点を制圧し、アッコン陥落で聖地防衛を成し遂げた

 

・・・という具合にまとめられるでしょう。

 

ようは「マムルーク朝が聖地防衛の最後の砦となり、十字軍の終焉をもたらした」という点を抑えておきましょう!